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1982年生まれ、現在ニューヨークのブルックリンを拠点に活動するアンソニー・マイラーは、2005年ミシガン州エイドリアン大学で美術学士号を取得後、2008年にニューヨーク市立大学シティカレッジにて美術学修士号を取得しています。マイラーは既存の時間や私たちを取り巻く環境、そして人間の精神における概念や物理的形態・空間を解体し再構築することで、親しみと違和感を同時に孕む神秘的な絵画を生み出します。グラファイトを使用したモノクローム作品では、即興的なリズムと強弱をつけたストロークで表現される十字線の連なりが画面に奥行きを与えています。走り書きのような線や網掛け、ぼかし等多様な技法を駆使し荒々しくも生命力を湛えるペインティングは、豊かな物語性と主題の個性を強調します。一方で、マイラーの優しく深みのある色彩を帯びた清閑な作品は、鳥のようにも見えるしなやかな曲線で描かれたモチーフが特徴的です。古代から続く生物の進化過程における造形美に魅了されてきたマイラーの行き着いた視覚表現は、観る者の内面からジリジリと惹きつけます。さらに、これら鮮烈な対比を持つマイラーの作品群は近年交わりを深めつつあり、漆黒の線と柔らかなグラデーションが一つの空間内に共存し、また、新たに油彩を採用することで質感や立体的な要素を取り入れ始めています。油彩の濃度が顔料で描かれた軽やかな画面に重厚感をも与え、彼のペインティングの構造的な完全性はより高められています。
近年の主な個展に「Looking Into Stone」L21（パルマ・デ・マヨルカ、2023年）、「There Are More Good People Than We Know」CHART（ニューヨーク、2022年）、「On Our Way To The Devil’s Fortress」MAKI Gallery（東京、2022年）、「Witness」The Pit（カリフォルニア州グレンデール、2021年）、「05」PM/AM（ロンドン、2020年）がある他、ニューヨークを中心にデンマークやフランス、イギリスなどでも精力的にグループ展に参加しています。