鍵岡リグレ アンヌ
1987年神奈川県生まれの鍵岡リグレ アンヌは、東京藝術大学絵画科油彩専攻を卒業後、同大学大学院にて壁画を研究。その後フランスに渡りフランス国立高等工芸美術学校にてフレスコ・モザイクの技術を学び、現在は鎌倉にアトリエを構えています。鍵岡はグラフィートという重ねた色層を削りとる古典的な壁画技法に布のコラージュを加え、そこに色層を重ねる独自のペインティング法を用いて立体感のある絵画を制作しています。日常生活の中にある抽象的な風景に関心がある鍵岡は、世界各地で取材した水面の反射をもとに、彫刻的な造形性をもつ「Reflection」シリーズを2014年から描いており、その後「Reflection」から展開された水面に映る人物を抽象と具象の間で描写した「Figure」シリーズが加わりました。さらに2019年のルクセンブルクでのアーティスト・イン・レジデンスをきっかけに、太古からの水の力により削り出された壮大に連なる岩肌を繊細な生キャンバスに薄い層で描き出す「Element」シリーズが誕生。また、これら3つのシリーズにおいて探究された表現や構図は、水面の流動的なエネルギーを利用して人の顔を分解し、再構築する 「Portrait」シリーズへと継承されています。鍵岡の生み出す作品は、圧倒的かつ繊細な色彩で構成され、抽象と具象、平面と立体の合間を行き来し、絶え間ない変化と共に独自の世界観で観る者を魅了しています。
主な個展に「Undersurface」MAKI Gallery(東京、2024年)、「Addition - Subtraction」MAKI Gallery(東京、2022年)、「Transition」MAKI Gallery(東京、2021年)、「A Moment of Immersion」MAKI Gallery(東京、2018年)、「Reflection: 2015-16」MAKI Gallery(東京、2016年)、「Anne Kagioka Rigoulet」MAKI Gallery(パリ、2014年)などがある他、フランス、日本、ラトビアなどでのグループ展や壁画プロジェクトに参加し、国内外のアートフェアにも数多く出展しています。2023年には、アーティゾン美術館での大規模な展覧会「ABSTRACTION 抽象絵画の覚醒と展開」にて、20世紀に咲き誇った抽象絵画の伝統を受け継ぎながらも、あらたな表現に挑む新鋭作家のひとりとして紹介されました。また同美術館には鍵岡の作品がコレクションとして収蔵されています。