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Installation view, artwork: Anne Kagioka Rigoulet, Photo: Naohiro Utagawa
本展のタイトルである「Undersurface」には、「表面上の形象だけではない隠れた層や不可視の世界を表現したい」という鍵岡が当初から自身の作品に込める強い想いが現れています。本シリーズで作家が追求しているのは、水面に映し出される像を再現することではなく、私たちの目に見える世界の下や裏側に隠れているもの、例えば自然を形作るエネルギー、その場所に漂う雰囲気や感覚、形を持つものが本来の形を失い抽象化されていく過程で生じる動きや力を捉え、それらを絵画として画面上に生み出すことです。
そうして生み出される作品は、決して鍵岡自身の解釈や特定の物語を示すものではありません。作家は言葉や具象的なイメージによって作品が規定されることを避け、観る人の自由な想像力に働きかける絵画そのものの可能性を探究しています。どの瞬間を切り取りどんな構図で描き出すのか、どんな色彩やマチエールを与えるのか、どうしたら直接感覚に訴えるような画面が生み出せるのか、といった絵画の本質が突き詰められた作品は、エネルギーや躍動感を浮かび上がらせることを可能にします。
本展では作家が当初よりこだわり続けている色彩の追求に重点を置き、色味や彩度の押し引き、調和関係を各作品で探っています。繊細に選び抜かれた色彩に加え、グラフィートという古典的な壁画技法と布のコラージュを用いて生み出される表面のボリューム感にも一枚一枚変化を持たせ、作品のバリエーションを広げていくことを試みました。完成作品とともに展示される水彩画の習作は、鍵岡独自の色づかいと立体性が生まれるプロセスにより深く想いを馳せる機会を与えます。
アーティスト